★ふれあいー地域医療の現場から

(1996年9月自治医大図書館ニュースより)
この町に来て8年目になります。6年半は同じ町内の山之上診療所(正式には竜王町国民健康保険診療所)の所長として過ごし、昨年10月に弓削診療所(正式には竜王町国民健康保険診療所弓削出張所)が開設され、こちらに赴任しました。現在山之上診療所には14期生の梅本富士先生(平成13年4月より野洌義則先生)が赴任し活躍中です。
 竜王町は琵琶潮の東南にある人口1,3000人の農村ですが、大津市や京阪神にも比較的近いため、最近は新興住宅地ができて人口は増えています。現在町内には私と梅本先生以外に開業医が一軒あるだけで日常の診療業務以外に乳幼児検診や学校検診、予防注射等の業務が多いのが悩みの種となっています。
 昨年10月に現診療所を開設するに当たって少しでも新しいことをしたいと思い、試みていることが2つあります。
 ひとつは、診察室を2つにし、いずれも個室にしました。片方で診察している間にもう片方で次の人に準備してもらうようにしています。いずれの部屋も個室なのでプライパシーの保護にもなりますし、診察の準備に時間をとられることもありません。ただ私が行ったり来たりしなければならないことと息者さんの話が長くなりがちなのは善し悪しですが。
 ふたつめは、待合室に私の医師としての経歴(得意分野を含む)と写真を貼りました。特に初診の患者さんは、知らない医師に診てもらうときは恐る恐る診察室に入ってくるものです。せめてどんな顔しているか名前と得意分野くらい予め知っておいてもらって、少しでも親しみを持って診察室に入ってきてもらうことは大切だと思ったからです。
 これらの2点は以前アメリカの家庭医を見学に行ったときに、個人の診療所だけでなく大病院でも行われており大変感銘したことを参考にしました。患者さんにはいずれも好評のようです。
 弓削診療所は、人里離れた田圃の中に建っていますので、開院前は患者さんが来てくれるのか心配しましたが、予想外に多くの患者さんに来て頂いています。
 今後はこれまでにない新しいこと(外来診療と在宅医療を中心としたプライマリケアセンター、ブライマリケア教育の場等)を行っていきたいと考えています。
 最後に、診療所の役割というものは、病院とは異なっていて当然であると思います。病院は医師、看護婦、薬剤師、PT、OT等コメディカルの数も圧倒的に多く、施設の面でも圧倒的に大きいのだから、同じことを考え、同じことをしていたら診療所は病院に及ばないのは仕方がないことだと思います。しかし、診療所には病院でできないこともいろいろあります。
そのうち21世紀に生き残れる診療所の医師とは以下のように考えます。

  1. 家庭医(かかりつけという言葉は嫌いだ)として患者及び家族のことを熟知し、より身近な医療、健康アドパイザーであること。
  2. 在宅医療を行うこと。
  3. 医療以外の保健、福祉の関係者と相互に情報を交換し、適切な指導を行えること。
  4. 内科、小児科といった枠にこだわらず、広い臨床の知識と実力を備えること。
  5. ひとりで凝り固まらないで、他人の言うことを素直に間ける耳を持つこと